息切れとは
息切れとは、何らかの原因によって呼吸をするのに努力が必要となり、不快感を自覚する状態のことです。この不快感には、息苦しさ、胸の圧迫感、呼吸が浅くなるといった様々な症状が該当します。
息切れのセルフチェック
激しい運動をした後にだけ息切れが生じる場合は、特に心配する必要はありません。ただし、以下のような息切れがある場合は、ご相談ください。
- 早足で歩くと息切れする
- 緩やかな坂を上ると息切れする
- 階段を上り下りすると息切れする
- 同年代の人と一緒に歩くと、自分だけ息切れしてついていけない
- 平坦な道を数分歩くだけで息切れする
- 息切れがひどくて外出できない
- 服を着替えるだけで息切れする など
息切れの原因
息切れとは、呼吸中枢が呼吸筋に送る指示と実際の動きのバランスが崩れることで生じる不快感の一種です。
通常、呼吸中枢からの指示に従って呼吸筋が適切に動き、効率的な呼吸が行われます。
しかし、呼吸中枢の指示と呼吸筋の動きが一致しない場合、呼吸中枢が必要とする酸素供給量と、実際に供給される酸素量が一致しないため、息切れを感じることがあります。この不均衡が生じる原因には、以下のようなものがあります。
ストレス・不安
精神的なストレスや不安は自律神経に影響を与え、息切れが生じることがあります。
過換気症候群(過呼吸性症候群)
過換気症候群とは、呼吸回数が過度に増加し、血中の二酸化炭素濃度が低下する状態を指します。一般的に、不安や緊張などの精神的ストレスが引き金となり、呼吸中枢が刺激されることで生じます。その結果、呼吸が浅くなり、息切れや手足のしびれなどの症状が現れます。
心臓疾患
心臓疾患により、心機能の低下や心臓の弁が正常に機能しないことがあると、心臓が全身に血液を十分に送り出せなくなります。その結果、組織への酸素供給が不十分となり、息切れが生じます。
弁膜症
弁膜症とは、加齢や動脈硬化などの原因で、心臓内の血液の逆流を防ぐ弁が正常に機能しなくなる状態のことです。心臓弁膜症には、弁の開きが不十分で血液の流れが悪くなる狭窄症と、弁が完全に閉じず血液が逆流する閉鎖不全症があります。主な症状には、息切れ、動悸、疲労感、浮腫などがあり、進行すると心不全に至ることもあります。
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
虚血性心疾患とは、動脈硬化や血栓により心臓に血液を供給する冠動脈が狭窄または閉塞し、心臓への血流が低下する状態のことです。血流が低下することで心筋が酸素不足となり、胸の痛みや締めつけられるような圧迫感、運動時の息切れなどの症状が現れます。
不整脈
不整脈とは脈がゆっくり打つ、速く打つ、不規則に打つ状態のことです。不整脈が長期間持続すると心機能が低下することがあり、全身への酸素供給が不十分になることから、息切れが生じることがあります。
呼吸器疾患
呼吸器疾患により呼吸機能が低下すると、十分な酸素を取り込むことができなくなり、全身への酸素供給が不十分になるため、息切れが生じます。
気管支喘息
気管支喘息とは、気管支に慢性的な炎症が生じ、様々な刺激に対して気道が敏感になり、発作的に気道が狭くなることを繰り返す病気です。息切れ、呼吸困難、喘鳴、咳、痰などの症状を引き起こされ、発作時にはこれらの症状が顕著に現れます。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、たばこの煙や化学物質などの有害物質により気管支が炎症を起こし、気管が狭くなり、さらに肺胞が破壊されることで呼吸機能が低下する状態を指します。運動時の息切れや呼吸困難、咳、痰などの症状を引き起こします。
自然気胸
気胸とは、肺を覆う胸膜に突然穴が開き、肺から空気が漏れて肺がしぼんでしまう病気です。突然の息切れ、呼吸困難、胸の痛み、咳などの症状が現れます。やせ型で背の高い男性や、喫煙歴のある高齢男性に好発しやすい特徴があります。
間質性肺炎
間質性肺炎とは、肺胞壁やその周囲の結合組織である間質に炎症が生じる病気のことです。炎症が進行すると肺胞壁が厚くなり、ガス交換が効率的に行えないことから、酸素を取り込みにくくなります。また、間質が線維化することで肺が硬くなり、肺の膨らみが悪くなって肺活量が低下します。主な症状には、運動時の息切れや咳などが見られます。
貧血
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が不足する状態のことを指します。赤血球は全身に酸素を運び、ヘモグロビンは酸素を結び付ける役割を担っています。貧血が生じると、全身に運ばれる酸素の量が減少し、体内の組織に十分な酸素が供給されなくなります。その結果、息切れ、めまい、立ちくらみ、頭痛などの症状が現れます。
生活習慣
肥満、運動不足、喫煙などの不健康な生活習慣により、体力や呼吸機能が低下し、息切れが生じることがあります。
息切れする時の検査方法
息切れの症状が見られる場合、血液検査、動脈酸素飽和度・脈拍数の測定、呼吸機能検査、胸部レントゲン検査、CT検査、MRI検査などの検査が行われます。
心臓疾患が疑われる場合には、心電図や心臓エコー検査を実施することがあります。
息切れの治し方・治療方法
呼吸器疾患の治療
呼吸器疾患が原因の息切れの場合、原因となる病気の治療を行います。
気管支喘息では、気管支の炎症を抑える吸入ステロイド薬と気管支を広げる気管支拡張薬を使用します。慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などの薬物療法に加え、呼吸リハビリテーションが行われますが、まずは禁煙をすることが重要です。小さな気胸の場合は、安静や酸素療法によって自然治癒を待ちますが、大きな気胸や再発の場合はドレナージや手術が必要になります。間質性肺炎の場合は、ステロイドや免疫抑制剤を用いて肺の炎症を抑えます。
心臓疾患の治療
心臓疾患が原因の息切れの場合、まず原因となる病気の治療を行います。薬物療法で心臓の負担を軽減し、患者様の病態に応じてカテーテル治療や外科的手術が選択されることもあります。心不全の症状が見られる場合には、利尿薬や血管拡張薬などを使用して心臓の負担を軽減します。
貧血の治療
貧血による息切れの場合、鉄剤やビタミンB12の補充、輸血などの治療が行われます。貧血の原因に応じて適切な治療を行うことで、酸素の運搬能力が改善され、息切れの症状が軽減します。
心因性の治療
心因性の息切れは、ストレスや不安が原因となる場合があります。ゆっくりと深呼吸をしてリラックスすることで、息切れの症状が改善しやすくなります。それでも症状が改善しない場合は、心療内科や精神科を受診し、抗不安薬や抗うつ薬を使用した薬物療法や心理療法を受けることも考えられます。
運動療法
一部のケースでは、運動療法が効果を発揮することがあります。呼吸法のトレーニングや身体活動の増加により、呼吸機能が向上し、息切れの軽減につながる場合があります。
息切れの対処法
適度な運動
日常生活にウォーキングや階段の利用などの適度な運動を取り入れることで、自律神経のバランスを整え、心肺機能を向上させることができ、息切れの予防にもつながります。
禁煙
喫煙は呼吸器疾患や心臓疾患のリスクを高めるため、禁煙することが望ましいです。
正しい呼吸法
深呼吸や腹式呼吸などの呼吸法を身につけ、日常生活に取り入れることで、息切れを防いで呼吸を落ち着かせる効果があります。
ストレス・不安の解消
ストレスや不安が原因で息切れが生じる場合、リラクセーション法やカウンセリングを活用してストレスや不安を解消することで、息切れの改善が期待できます。
よくあるご質問
息切れは医療用語で何と呼びますか?
息切れ、息苦しい、深く息が吸えない、呼吸がしづらい、空気を吸い込めない感じなどの状態は、医学用語で総称して呼吸困難と呼びます。
息切れで受診する目安は?
息切れが急激に悪化したり、肩や腕に痛みを伴ったり、長期間息切れが続いたりする場合、または既往歴や家族歴がある場合は、病院を受診するようにしましょう。
息切れを改善する呼吸はありますか?
口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの効果的な呼吸法を日常生活に取り入れることで、息切れの改善を期待できます。 口すぼめ呼吸とは、口を閉じて鼻から息を吸い、口をすぼめてゆっくり細く息を吐く呼吸法です。歩行時に合わせて行うことで、息切れの改善を期待できます。また、口すぼめ呼吸と腹式呼吸を組み合わせて行うことで、より楽に呼吸ができるようになります。