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脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症(高脂血症)とは

脂質異常症とは脂質異常症は、血液中の脂質値が基準値から外れた状態を指します。
以前は高脂血症と呼ばれていましたが、脂質が低い場合も問題となるため、現在は脂質異常症と呼ばれています。
脂質はコレステロールと脂肪酸に分けられます。
肥満になると脂肪酸を肝臓や筋肉に取り込むインスリンの作用が低下し、脂肪酸が血液中に残ります。脂肪酸が3つ集まると中性脂肪となり、これが増えると「高中性脂肪血症」になります。この状態になると「善玉」であるHDLコレステロールが低下し「低HDLコレステロール血症」になります。
また、コレステロールを多く含む食品の過剰摂取や体質的な要因で起こる「高LDLコレステロール血症」は、肥満がなくても「悪玉」であるLDLコレステロールを肝臓に取り込む受容体の働きが低下することで発症することがあります。

脂質異常症の症状と合併症

初期症状はないので危険

脂質異常症は多くの場合、症状がありません。
健康診断で指摘されても自覚症状がないため、放置する人も多いでしょう。
しかし、放置すると血液中の脂質が増え、動脈硬化の原因となります。

動脈硬化による合併症

動脈硬化血液中にコレステロールなどの脂質が多い状態が続くと、血管壁に余分な脂質が沈着し、プラークと呼ばれる塊が形成されます。これらのプラークは柔らかく壊れやすいものですが、時間が経つと血管壁が厚くなり、血管が詰まりやすくなります。この状態を「粥状動脈硬化」と呼びます。
不安定なプラークが破れると、破れた部分を修復するために血小板が集まり、血栓ができます。この血栓が大きくなって動脈を塞ぐと、血液がその先に流れなくなり、血流が途絶えた組織や臓器が壊死することになります。

脂質異常症の原因

脂質異常症の原因は、遺伝、体質、体重増加、食生活、運動不足、他の疾患や薬物の影響が関係しています。
最近では日本人に脂質異常症が増えており、その背景には食生活の欧米化や運動不足が挙げられます。
動物性脂肪の過剰摂取はコレステロールの増加、果物や甘味物の過剰摂取は中性脂肪の増加につながります。また、喫煙や運動不足は「善玉」であるHDLコレステロールの減少を引き起こします。
遺伝的な「家族性高コレステロール血症」では、「悪玉」であるLDLコレステロールが増加し、動脈硬化のリスクが高まります。家族内で男性が55歳より若く、女性が65歳より若い時点で心筋梗塞を経験した人がいる場合は、自身のLDLコレステロール値の確認をおすすめします。

痩せているのに脂質異常症になるのはなぜ?

痩せているのに脂質異常症なのはなぜ?脂質異常症は「太っている人がなる病気」というイメージがありますが、普通体型や痩せ型でもLDLコレステロールが高い人がいます。これは遺伝的な要因や、現代の食事に含まれる飽和脂肪酸の増加が影響していると言われています。特に、脂質異常症の家族がいる人や、糖質を控えて動物性脂肪を多く摂取する人は注意が必要です。
また、内臓脂肪は皮下脂肪と比べて目立ちにくく、普通体型や痩せ型でもリスクがあります。健康診断で脂質異常を指摘された方やリスクが高い方は、定期的な検査と必要に応じた治療を受けましょう。

脂質異常症の診断基準

脂質異常症は、通常空腹時の採血結果が、以下の表の数値の場合に診断されます。
LDLコレステロールが140ml/dLに満たない場合でも、120~139mg/dL場合は境界域と判定されます。これは、高血圧や糖尿病など他の要因が絡み合うことで冠動脈疾患が発症しやすくなるので、発症リスクが高くない状態であるかを確認する必要があるためです。
これらの基準値は、年齢、性別、喫煙、家族歴、CKD(慢性腎臓病)や糖尿病などの合併症の有無など、患者様によって異なるため、ご自身の目標値を医師にご相談ください。

高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール 140mg/dL以上
境界域高LDLコレステロール血症 120~139mg/dL
HDLコレステロール血症 HDLコレステロール 40mg/dL未満
高トリグリセライド血症 中性脂肪(トリグリセライド:TG) 150mg/dL以上

※早朝空腹時採血(2012年動脈硬化ガイドラインより改変)

脂質異常症は治るの?改善(治療)方法と予防

脂質異常症は治るの?改善(治療)方法と予防脂質異常症の治療は、主に食事療法や運動療法などの生活習慣の改善が基本です。これらの療法を2〜3ヶ月続けても効果が不十分な場合は、薬物療法が検討されます。
中性脂肪が高い「高トリグリセライド血症」や「善玉」コレステロールが低い「低HDLコレステロール血症」は、食事療法や運動療法で改善しやすい傾向があります。しかし、「悪玉」コレステロールが高い「高LDLコレステロール血症」は、食事や運動だけでは十分に改善しないことが多く、薬物療法が必要になることがよくあります。

食事療法

適度な食事制限脂質異常症を改善するためには、食事の量と質に配慮し、適正体重を維持することが重要です。具体的な例として、食材を選ぶコツや調理時に心がけることを以下に解説いたします。

糖質・コレステロールの摂取制限

糖質制限は、健康的な食事として世界的に推奨されています。カロリー制限とは異なり、糖質の少ない食品を選ぶため、空腹を我慢せずに続けられます。ジュース、お菓子、パン、ビールなどを減らし、カロリーオフ製品に切り替えることが推奨されます。間食にはナッツ、チーズ、豆乳などがおすすめで、夕方にプロテインサプリメントを飲むと、夕食を食べ過ぎるのを防げます。
コレステロールには、食事由来のものと肝臓で合成されるものがあります。コレステロールや脂肪を多く含む食事を摂りすぎると、血液中のコレステロールが増加します。食事から摂取するコレステロールは1日200mgを超えないようにし、内臓類や卵の摂取量を制限しましょう。魚介類にはコレステロールを下げるタウリンが含まれているため、内臓や魚卵に気をつける程度で問題ありません。

脂質の摂取を工夫

脂肪は、「飽和脂肪酸(S)」「多価不飽和脂肪酸(P)」「一価不飽和脂肪酸(M)」の3種類に分類されます。不飽和脂肪酸は血液中のコレステロールを減少させますが、飽和脂肪酸は逆にコレステロールを増加させます。
バランスの良い脂肪酸の摂取には、魚介類や植物油を積極的に摂り、乳製品や肉類の脂肪分を制限することが重要です。また、トランス脂肪酸を含むショートニングやマーガリンの摂取は動脈硬化を悪化させるため、注意が必要です。
油は揚げ物や炒め物だけでなく、お菓子やパン、カレールーなどに含まれる隠れた油にも注意し、1日の摂取量を大さじ1~2杯程度に抑えるよう心がけましょう。

アルコール量の調整

アルコールは血液中の中性脂肪を増やす働きを持っています。また、カロリーが高く自制心を低下させて食事制限が守れなくなる恐れもあるので、可能な限り飲酒を控えてください。
おつまみは動物性脂肪が少なく食物繊維の多い料理にして、適量を心がけましょう。

食べてはいけないもの一覧

食事療法では、何を食べるかとともに、どのように調理するかも重要になります。蒸す・煮るなどの調理法は油を使わずカロリー抑制でき、食材を大きめにカットすると、噛むことで満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを予防できたりします。

<高LDLコレストロール血症の場合>
  • 鶏卵(卵の黄身)
  • イクラ、たらこ、すじこなどの魚卵
  • ばら肉、皮などの肉類の脂身
  • モツ、レバー、肝などの肉・魚の内臓
  • マーガリン、ショートニングなどのトランス型不飽和脂肪酸を多く含む食品
  • クッキー、ケーキ、シュークリーム、カステラなどの生クリーム・バターを多量に使用する食品
  • アルコール(ビール:中瓶1本、日本酒:180ml、焼酎:100ml、ワイン:200ml ※女性はこの半分)

など

<高トリグリセライド血症・低HDLコレストロール血症の場合>
  • ご飯、パンなどの主食
  • 砂糖入りの清涼飲料水
  • クッキー、ケーキ、シュークリーム、カステラなどの生クリーム・バターを多量に使用する食品
  • 和菓子、飴
  • 果物
  • 唐揚げ、天ぷら、ファストフードなどの脂っこいもの
  • 塩分(1日6gまで)

など

運動療法

適度な運動適度な運動は、基礎代謝量が増加して、肥満を予防するとともに体重を落としやすくなります。また、中性脂肪の減少とともにHDLコレステロールの増加が見込まれるので、脂質異常症が改善されます。高血糖や高血圧の改善、血栓予防のために血管を強くすることは、運動の継続で効果が得られやすく、動脈硬化の予防にも有効です。
患者様の状況によって推奨する運動レベルが異なりますので、まずは医師にご相談ください。

薬物療法

運動療法や食事療法で生活習慣を改善しても、中性脂肪やHDLコレステロール、LDLコレステロール、総コレステロールの値が改善されず、狭心症や動脈硬化のリスクがある場合は薬物療法が考慮されます。
薬物療法の目的は、血液中の脂質量を適正化することです。服用期間が長期にわたるため、現在服用している薬と今後必要になる可能性のある薬について理解しておくことが重要です。脂質異常症の薬物療法に使用される薬は、「中性脂肪を低下させる薬」「コレステロールを低下させる薬」「両方の数値を低下させる薬」の3種類に大別できます。