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高血圧症

高血圧とは?診断基準

高血圧とは?診断基準血圧は、心臓が血液を送り出す際に血管の壁にかかる圧力のことです。心臓が収縮する時の圧力を「収縮期血圧(上の血圧)」、心臓が拡張する時の圧力を「拡張期血圧(下の血圧)」と呼びます。血圧の値は、心拍出量と血管の収縮やしなやかさ(血管抵抗)によって決まります。
血管は血液を全身に運ぶ重要な役割を果たしています。
収縮期血圧の時、大動脈が膨らんで血液が溜まり、拡張期血圧の時に、膨らんだ血管が元に戻ることで血液がゆっくりと先に送られます。これにより、心臓が1回収縮し拡張するごとに血液が全身にスムーズに送られるのです。
血管がしなやかで柔軟な時は、血圧は上下とも基準値内に収まりますが、動脈硬化などで血行が悪くなると、それを補うために心臓が血液をより多く、強い力で全身に送ろうとするため、血圧が上がります。これが常態化した状態が高血圧症です。

高血圧の基準

  上の血圧 下の血圧
医療機関で計測した時 140mmHg以上 90mmHg以上
自宅で計測した時 135mmHg以上 85mmHg以上

高血圧症の原因

高血圧は、本態性高血圧と二次性高血圧に分類されます。

本態性高血圧

本態性高血圧は、高血圧の発症原因が明確でないもので、遺伝的な要因と生活習慣が関与して発症すると考えられています。高血圧症の約90%がこの本態性高血圧に該当します。

発症しやすい生活習慣

  • 過剰な塩分摂取
  • 肥満
  • 過剰な飲酒習慣
  • 精神的ストレス
  • 自律神経の調節異常
  • 運動不足
  • 野菜や果物(カリウムなどのミネラル)不足
  • 喫煙

など

二次性高血圧

二次性高血圧は、特定の疾患が原因で発生する高血圧です。腎臓疾患や血圧を上昇させるホルモンの分泌異常などが原因で生じることが多く、原因疾患の治療により高血圧も解消されます。

高血圧で現れる症状と合併症

高血圧は一般的に自覚症状がありませんが、合併症のリスクが高まると、動悸、息切れ、手足の浮腫などが現れることがあります。これらの症状が見られる場合、高血圧による悪影響が既に進行している可能性があります。
症状がないからといって高血圧を放置すると、動脈硬化が進行して合併症のリスクが増加します。定期的な血圧測定と健康診断を受け、異常があれば適切な治療を受けることが重要です。

動脈硬化

動脈硬化高血圧を放置していることで動脈の血管の柔軟性が失われる動脈硬化が起こります。進行すると、血管の内腔がプラーク(コレステロールでできたこぶ)によって狭くなり血液の流れが悪くなるため、様々な臓器に障害を引き起こします。

心臓

心筋梗塞

心筋梗塞冠動脈が完全に詰まり、心筋が壊死することです。全身に血液を送る機能が低下するため、我慢できないほどの胸の痛み、ショック状態(血圧低下)、動悸・冷や汗などが現れ、重篤な不整脈によって心停止することや時には心破裂を起こすこともあります。

狭心症

冠動脈が狭くなり、心臓に十分な血液が送れなくなると、急に胸が締め付けられるような痛みが現れます。血管が完全に詰まるわけではないため、この症状は一時的です。

心不全

心臓の働きが低下して血液の循環がうまくいかなくなり、全身の臓器に十分な血液を送り出せなくなる状態です。血流を保つため、血液を溜め込む(うっ滞)が起こることで、足や顔のむくみ、動作時の息切れ、動悸などの症状が現れます。

脳出血

脳の細い血管に圧力がかかり血管が破裂し、今まで感じたことがない程の激しい頭痛が現れます。

脳梗塞

血栓によって脳の一部に血液が流れなくなるため、酸素や栄養が行き届かず、その先の組織が壊死することで麻痺やしびれなどの症状が現れます。後遺症が残る場合もあります。

認知症

脳の血管が詰まったり破れたりすると、その部分に酸素や栄養が行き渡らず、神経細胞が機能を失い認知症を引き起こします。症状は脳の障害を受けた部位によって異なりますが、血管性認知症では、できることとできないことがはっきり分かれる傾向があります。

腎臓

腎硬化症

腎臓の血管が動脈硬化を起こして、腎機能が低下した状態です。豊富な血流が必要となる糸球体(毛細血管の塊)で血液の流れが悪くなると、次第に硬化して老廃物のろ過が行えなくなり、慢性腎不全に至ります。

腎不全

血液のろ過を担う糸球体が硬化して網目が詰まると、老廃物を十分に排泄できなくなります。腎機能が正常の30%以下になると「腎不全」と診断され、一度慢性腎不全になると腎機能は回復しません。老廃物が体内に溜まると「尿毒症」を引き起こし、最終的には死に至るため、生命維持のために人工透析が必要となります。

血管

大動脈瘤

高血圧が持続すると、全身に血液を送る大動脈の壁がこぶのように膨らむことがあります。この状態を動脈瘤と呼び、無症状で血管の機能に支障を与えないことが一般的ですが、破裂すると強烈な痛みや大出血、意識障害を引き起こし、突然死に至ることがあります。さらに、血管壁が弱くなることで裂ける「解離性大動脈瘤」が発生することもあります。

閉塞性動脈硬化症

高血圧により、足の血管が狭くなったり詰まったりして、十分な血流が確保できなくなることで起こる病気です。歩行時に足のしびれや痛み、冷たさを感じたり、休みなく歩けなくなることが特徴です。病気が進行すると、安静時にも症状が現れます。治療を怠ると、閉塞した血管部分に人工血管を移植する必要が生じ、最悪の場合、足の切断が必要になることもあります。

高血圧の治療方法

食事や運動などの生活習慣の改善を中心に、それだけでは不十分な場合は薬物療法を併用します。

生活習慣の改善

生活習慣の改善ストレスや休息・睡眠を上手に管理することが基本になります。また、血圧を上昇させる冷えの解消による血行改善や、禁煙・禁酒も重要です。

ストレス

ストレスは血圧を上げる要因のひとつです。リフレッシュのための時間を入れるなど、これを機に余裕のあるスケジュール管理を行いましょう。

休息・睡眠

休息や睡眠が不足すると疲労やストレスによって血圧が上昇します。忙しくても、意識して適度な休憩や睡眠をとるようにしましょう。

血行の改善

冷えは血圧を上昇させることがありますので、体を冷やさない事を意識しましょう。
入浴は血管を広げて血行を改善する助けになりますので、できるだけ毎日入り、夏場でもバスタブに浸かって体の芯まで温めるようにしましょう。冬場は急激な温度変化にさらされないように、脱衣所も暖かく保つことが大切です。入浴後は、冷えないうちに靴下を履くなどして早めに体を保温するように心がけてください。ただし、お湯の温度や入浴時間は個々の健康状態に応じて異なることがありますので、医師の指示に従ってください。

禁煙・禁酒

喫煙は動脈硬化を進行させて血管を収縮させるため、心臓病の危険因子になっています。また、高血圧がある場合、喫煙によって心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇するとされています。呼吸器疾患などの予防にもつながりますので、禁煙・節煙を心がけましょう。
また、適量の飲酒は問題ありませんが、大量の飲酒習慣があると血圧上昇につながります。脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高尿酸血症(痛風)、肝臓障害のリスクも高くなりますので、ご注意ください。

運動療法

ウォーキング、水泳、サイクリング、エアロビクスなど、軽い有酸素運動を続けることが有効です。
激しい運動は必要なく、1分間の心拍数が100~120程度の運動が適しています。1日30分以上の運動をできれば毎日、少なくても週に3~4日程度は続けましょう。

食事療法

食事療法塩分・カロリー・脂質のコントロールを基本に行います。高血圧だけでなく他の生活習慣病予防や改善に有効で、老化予防効果も期待できます。

減塩

塩分を過剰に摂取すると、細胞が水分を取り込んで血液量が増加し、血圧が上昇することがあります。日本人の平均塩分摂取量は1日に約10gですが、血圧を管理するためには男性が1日8g、女性が1日7gまでの制限が推奨されています。加工食品を避け、香辛料やハーブを上手に活用するなど、無理のない方法で取り組むことが重要です。

カロリー・脂質の制限

肥満の場合、適正体重に戻し、それを維持することにより、高血圧や他の生活習慣病の改善が期待できます。特に肥満と高血圧に加え、糖尿病か高脂血症のいずれかがある場合は、カロリー制限や脂質制限が特に重要です。油物などはできるだけ避け、野菜、キノコ、海藻などを積極的に摂取し、バランスの取れた食事を規則正しく摂るように心がけましょう。

薬物療法

非薬物療法で血圧が十分に管理できない場合は、薬物療法が必要です。薬物療法は血圧を適切に低く保ち、動脈硬化の進行や合併症のリスクを軽減します。異なる作用を持つ降圧薬があり、患者様の状態や他の健康問題に応じて処方が決定されます。

予防方法

減塩・塩分の排出

日本人は昔から塩分摂取量が多く、全国調査の平均では1日に約10g程度です。塩分を多く摂ると血圧が上昇しやすくなるため、塩分制限は重要です。特に高血圧治療では、1日の塩分摂取量を6g未満にすることが目標とされています。食塩だけでなく、漬物、干物、加工肉、スープ、麺類、丼ものなどにも多く含まれることがあるので、意識することが大切です。
また、カリウムを多く含む芋類、果物、野菜、海藻、肉や魚、乳製品は、塩分の吸収を抑制し、尿からの排泄を促進する効果がありますが、特定の健康状態の方は医師の指示に応じて量を調整する必要があります。

カルシウム・マグネシウムの摂取

乳製品に含まれるカルシウムは血圧調整に必要なミネラルの1つです。乳製品以外にも、骨ごと食べる小魚や大豆、大豆製品、緑色の濃い葉物(小松菜やモロヘイヤなど)にも比較的多く含まれています。ただし、乳製品には同時に脂質も多く含まれているため、摂り過ぎには注意が必要です。
また、海藻や魚介類、豆類、玄米、ライ麦などに含まれるマグネシウムは、血管を拡張して血圧を調整したり、血栓の発生を抑える作用があります。ライ麦パンや玄米を選ぶ、料理に海藻を加えるなど、食事に少しずつ取り入れてみると良いでしょう。

動物性脂質を選ぶ

動物性脂肪を多く摂取すると、動脈硬化の進行が促進される可能性があります。したがって、肉の脂身やバター、生クリームなどを多く摂る方は注意が必要です。バラ肉やカルビ、ベーコン、ウインナーなどより、もも肉やヒレ肉、ロース肉(脂身が少ない種類)、減塩タイプのハムを選ぶことが推奨されています。
また、魚の脂肪(オメガ3脂肪酸)は心疾患のリスクを低減する効果があります。肉だけでなく、脂の多い魚(鰯、鯖、銀鮭、鯵、鰤、マグロのトロなど)も積極的に摂取することが推奨されています。ただし、干した魚や味噌漬けなどは塩分が多く、脂肪が酸化しやすいため、生の魚を選ぶことが望ましいでしょう。